アメリカの豆乳事情

バーガーキングやKFCが、代替肉を使ったバーガーやフライドチキンの販売を開始するなど、近年、米国では大豆を活用した代替肉がブームになっています。ここのところ、しばらく低迷が続いていた豆乳消費も、10年ぶりに上昇に転じました。

米国における大豆の歴史

米国は、世界の大豆生産量の約半分を生産する大豆大国です。しかし、数千年前から大豆を利用してきた中国や日本とは異なり、大豆が米国に伝わったのは、植民地時代の1765年でした。当時は、家畜に与えられるだけで、「人間が食べるもの」と認識されるようになってからは、まだ100年程度しかたっていないのです。

米国では、一部のベジタリアンや健康志向の人の間だけで食べられていた大豆ですが、1980年代になり、豆腐が一般のスーパーにも並ぶようになり、1990~2000年代には、豆腐・豆乳ブームがやってきました。1999年には、FDA(米国食品医薬品局)が、大豆食品が健康維持、とりわけ心臓病や脳卒中の予防に有効であるとして積極的に摂取するよう奨励しました。そのことも起因して、乳製品をすべて大豆製品に置き換えたりするなど、米国人の大豆摂取量が急上昇しました。

植物由来ミルクに押されていた豆乳に復活の兆し

しかし、2000年代のブームが去った後は、アーモンドミルクやオーツミルクなどの、植物由来の原料を使ったミルクの消費が急増する一方、米国の豆乳市場は減少傾向にありました。10年前には、豆乳の年間売上高は約10億ドルでしたが、2020年には2億140万ドルにまで落ち込んでいます。今では、消費量が急成長したアーモンドミルク(16億ドル)、オーツミルク(2億6400万ドル)の後塵を拝しています。

長らく低迷していた豆乳ですが、2021年になって、明るい兆しが見えてきました。2021年1月までの直近の3ヵ月をみると、豆乳の売上が10年ぶりに上昇したのです。その背景には、健康食として、そしてタンパク源としての豆乳の優秀さを強調したキャンペーンがありました。例えば、ダノンは、オリンピックの金メダルを通算23個獲得し、水の怪物と呼ばれるマイケル・フェルプス選手や、体操で金メダルを獲得したアリー・レイズマン選手など知名度が高いアスリートを起用し、豆乳の魅力をアピールしています。

シンプルな豆乳で、体に良い悪い論争から脱却へ

米国で消費される大豆の多くは、上述の代替肉のような大豆加工品であり、その中には、甘味料や添加物などの、体に悪いものを含む製品が多くあります。豆乳にも、甘味料が添加されていたり、無糖タイプでもバニラなどのフレーバーがついていることがあります。こうしたことから、アメリカでは、豆乳を含めた大豆製品は体に悪いという主張がなされることがあります。

健康的なアスリートを前面に出したキャンペーンにより豆乳が人気を博し、豆乳に対する誤解が解けるとともに、米国でも日本や台湾、タイと同じように豆乳が日常的な飲み物になる日が来ることを期待したいと思います。ちなみに、日本の無調整豆乳がお好きな人には、WestSoyが販売する豆乳の無糖バージョンがお勧めです。

…ということで、今回は米国の豆乳事情についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。次回は、ベトナムでの豆乳をご紹介する予定です。是非お楽しみに。

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