マレーシアの豆乳事情

世界の豆乳市場の中で、豆乳生産量がTOP10に入るマレーシア。外国の中では比較的治安が良く、物価が安いことから、“日本人が移住したい国ランキング1位”とも言われています。「世界を旅する豆乳」第6回の今回は、マレーシアで活躍されている日本人の杉谷衣織さんにマレーシアの豆乳事情をお聞きしました。

マレーシアの豆乳市場

マレーシアは、年間244百万ℓの豆乳生産量を誇っており、中国、タイ、ベトナム、日本、そして、台湾に次いで、世界6位の豆乳生産国です。マレーシアには、豆乳の大きな国産メーカーがあり、スーパーなどに流通しています。さらには、屋台などでの販売もされていることから、豆乳が広く飲まれています。

自己紹介をお願いします。

杉谷さん:マレーシアで食品関係の流通の仕事に従事している杉谷衣織と申します。マレーシアに住んで今年で5年目になります。マレーシアでは現地採用として、クアラルンプールの日系企業で数年間働き、その後、食に関する経験を活かし、日系企業とも取引のある、ローカル企業の食品担当として、毎日奮闘しております。

マレーシアでの暮らしはいかがですか?

杉谷さん:日本では、“移住したい国”NO1に挙がるほど、マレーシアは人気が高いことでよく知られていますが、その人気の通り、マレーシアはとても暮らしやすい国です。特に、クアラルンプールは、日本人シェフのいるレストランも多く、日本人のテイストにあう料理をいただくことができますし、日系のスーパーや企業もたくさん進出していることもあり、日本で暮らすのとほぼ変わりなく快適に生活することができます。さらに、物価も安く、日本の会社員の給与ですと、高級レジデンスに住んだり、お手伝いさんを雇うなど、裕福な生活ができるかと思います。ただ、英語ができないと苦労しますが…。

コロナ禍となり、マレーシアの生活は、どう変わりましたか?

杉谷さん:激変しましたね。日本の緊急事態宣言とは異なり、 まさに“ロックダウン“という言葉通りで、非常に厳しい行動規制が取られました。コロナの状況が厳しかった際は、国内のいたるところで検問が行われ、居住エリアから出ることはできませんでした。職業上エリアからでなければいけない際は、通勤証明書の携帯と提示が常に求められました。国から許可されている条件を満たしていなければ、買い物であっても検問を通してもらうことはできませんでした。まさに私たちの自由が一瞬にしてなくなった、そのような状況でした。

マレーシアの食生活について教えてください。

杉谷さん:マレーシアの食を語る上でポイントとなるのは、マレーシアが多民族、多宗教国家であるという点です。マレーシアは、物価が安いので、外食してもとても安くすませることができますので、外で食事を楽しむ人はかなり多くいます。マレーシアの主にマレー系、中華系、インド系の3つの民族から成る国家です。(マレー系が約62%、中華系は23%、インド系が7%程度)。各民族によって味の好み、そして文化の違いがあります。また、民族間で宗教の違いもあり、マレー系ですとイスラム教がメインとなり、豚肉やアルコールは禁じられたものとなります。また、仏教(19%)、ヒンドゥー教(6%)であれば、牛肉を避けた食文化が発達している、というように、民族によってお店で食べているものが変わってくるという、日本とは全く異なり、とても様々な食文化が混在している国だと感じます。

それでは、マレーシアの豆乳事情について、教えてください。

杉谷さん:豆乳を使った料理ですと、豆花(豆腐の柔らかいようなデザート)が思いつきました。豆花は、特に中華系の人々が屋台で販売しています。おおよそ2リンギット(日本円でおよそ54円)くらいで1杯購入することができる安価な食べ物です。日本では、「健康的だから豆乳を飲もう」という考えがあるかと思いますが、マレーシアでは砂糖の入った甘い豆乳が多く、健康的というイメージはあまり感じられません。もちろん、ヘルシー志向の人は、砂糖抜きでも飲みますが、マレーシア現地の方が飲んでいる豆乳の大半は甘いもののように見受けられます。マレーシアは、豆乳に関わらず、様々な飲み物が甘く、ミルクティーなども“激甘”です。これは、宗教に関係があるのではないかと思っています。例えば、ムスリム(イスラム教の方)は飲酒が禁じられており、また諸説あるようですが喫煙も禁じられたものと考える方々もいらっしゃるようで、嗜好品が限られています。そんな中で砂糖たっぷりのコーヒーやスイーツなどの甘いものが彼らのストレス解消、リラックス、あるいは仕事後のひと時を過ごすために使われているのかなと思います。それを追求していくうちに甘いもの中毒というか、何でもかんでも甘くするのが好き、というようになっているのではないかしら・・・というのが個人的な見解です。ですので、マレーシアでは、豆乳は今も昔も、ヘルシーな飲み物というよりも、スイーツの感覚で、とても楽しみな嗜好品のひとつになっているのではないでしょうか。


杉谷さん、本日は、日本では聞けないとても貴重な興味深いお話をありがとうございました。

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