カナダの大豆や豆乳事情について〈前編〉

カナダは、食品用大豆の生産において世界を牽引しています。また50ヵ国を超える世界中の国々に、全生産量のおよそ70%の大豆を輸出しています。日本でも、豆乳にカナダ産の大豆が多く使用されていますが、そのことはあまり知られていないのではないでしょうか。

そこで、豆乳あるある編集部では、なぜカナダの大豆が日本にもたくさん輸入され、豆乳に限らずさまざまな大豆製品に使われているのかを解き明かしたいと思います。きっと皆さんは、カナダが最高品質の食品用大豆の生産に多大な努力を費やし、それがゆえに、世界中の消費者を魅了していることに驚かれるにちがいありません。

今回は、カナダ大豆協会のニコール・マッケラーさんにお話をお伺いしました。このインタビューは、前編と後編の2回に分けてお届けします。


それでは、まず自己紹介をお願いします。

私はニコール・マッケラーと申します。カナダ大豆協会で、大豆カナダの市場開発マネージャーとして働いています。2021年10月にカナダ大豆協会に入所しましたが、それ以前は、カナダオンタリオ州で最大のコモディティ機関である「Grain Farmers of Ontario」に10年ほど勤めておりました。カナダ大豆協会では、カナダ産の大豆の新たなマーケティング機会を創出するため、カナダの大豆が皆さんに何を提供できるのかについての啓蒙活動を展開し認知度を高めています。トレードミッションやセミナーなどの支援活動を通じて、大豆食品関連の製造業者と一緒に、カナダが生産している大豆の品質や、安全性、サステナブルな大豆製品などについて説明したりしています。私自身も、オンタリオの南西部で家族が経営している換金作物農場の6代目として穀物、オーツ、大豆、大麦などを育てています。私はそんな伝統を引き継いでいることを誇りに思っています。

カナダ大豆協会について教えてください。

2014年に開設されたカナダ大豆協会は、大豆種子会社、生産者、輸送業者、輸出業者、加工業者を含む大豆産業のあらゆる関係者が連携するバリューチェーンの全国組織です。私たちの協会は、全国の中小から大企業にいたる多様なメンバーで構成されています。

当協会は、大豆分野の成長と収益性に影響を及ぼすような様々な課題に対して、リーダーシップを発揮しています。また、バリューチェーンやカナダ全土におよぶ調査・研究活動をコーディネートしたり、マーケットアクセスや市場の開発にかかわる活動をリードしています。カナダは、世界市場向けに高品質で追跡可能な、そして安全かつ持続可能な大豆を生産しているグロバルリーダーです。大豆はカナダで最も重要な作物のトップ 3 に数えられ、毎年生産量の 70% が輸出されています。

昨今、SDG’sは世界中の関心事ですが、カナダでは大豆のサステイナビリティに関して、どのような活動を展開しているのか教えてください。

カナダの大豆業界は、今後何世代にもわたって空気、水、土壌を保全するという持続可能な生産を約束しています。このような持続可能な農業方法を通じて私たちは、大規模に農地を拡大することなく、大きく生産量を伸ばしています。40年以上にわたり、カナダの全栽培面積は6%も減少していている一方で、大豆の収穫は57%も増加しています。このことは、カナダが広大なカナダの森林を保全することが可能であるという大きな成功事例であるといえます。

水の保全も、カナダの大豆生産者にとって注力すべき課題です。大豆生産者は、肥料に関する4R戦略を遵守しています。私たちは、肥料を適切な供給源から調達することから始まり、高品質な穀物を収穫するために、確実に無駄なく適正な割合で肥料が使用されるようにしています。また、その年の適正な時期に適正な場所に栄養分を与えることにより、農作物に必要な時に必要な場所で、栄養分を与えることができるようになっています。

土地を保全し、土壌を育てることは、カナダの持続可能な大豆生産の原点です。そして、カナダは、様々な異なる気候と土壌の広大な国である一方、それぞれの生産者は、次世代のために、自分の農地では土壌をどのように手入れをするのか、また、何をそのままにしておいた方よいのかなど、最善の方法を講じています。カナダの大豆を国際市場に輸出する際にも、持続可能な輸送方法を採用しています。カナダの地の利と発達した輸送インフラのおかげで農場から消費者へ大豆を効率的に輸送することができます。

カナダでは大豆の安全性に対してどのような活動を展開していますか。

カナダの大豆業界は、消費者の皆さんに安全で健全な大豆を提供することをお約束しています。すべてのカナダの食品用大豆は健全性、清浄度、サイズ、色、重量における均一性や、その他の多くの基準に対して厳格な公差を満たさなければなりません。多くのカナダの輸出企業はHACCPの原則を遵守し、独立した第三機関である研究所において分析されたサンプルを保持しており、それにより、独自に適正評価しています。このことは、カナダの大豆が、カナダ国内のみならず国際的な基準の商品であることをさらに保証しているのです。

品質に対するさらなる保証のため、バイヤーは、カナダIP認証制度(CIPRS)を通じて、大豆の生産および輸送に関し契約することができます。この制度は、カナダ穀物委員会(CGC)により監査・確認されています。このようにカナダの完全統合型のIP認証制度は、お客様の指定した特性・品質の大豆を確実に届けることができる他では見られないほどの実績があります。それは、大豆がお客様の仕様にそって栽培され、生産、精選、保管、輸送のすべての段階においてベストプラクティスによる徹底管理が行われていることを保証するものです。

2018年、CIRPSにHACCPを加えたこのプログラムは、食品安全保障の基準に重点を当てた国際機関であるグローバル フード セーフティ イニシアティブと同等の技術評価を受けています。


後編では、大豆製品や豆乳についてお届けします。

この記事をシェアする!