豆乳を取り入れる多彩な食育活動――にじいろ保育園
現代では、忙しさのあまりに、朝食を毎日食べない人が増えています。しかし、「一日の計は朝にあり」ということわざがあるように、朝食は三食の中ではひと際重要な食事で、一日を元気に過ごすためのエネルギーを与えてくれます。このように食生活と栄養が偏りがちな現代人にとって、食育は必要不可欠な教育の一つではないでしょうか。
日本豆乳協会でも、栄養価が高く、良質な植物性タンパク質を摂取していただくために、高校生向けの食育活動を長年継続して行ってきています。そして、ライクアカデミーが首都圏を中心に運営しているにじいろ保育園では、子どもの食に関する関心と知識を培うための取り組みを実施しています。
そんなにじいろ保育園の食育はどのように行われているのか?また、食育において、豆乳はどのように使われているのか?今回は、南雪谷園の佐藤瑞恵先生をお招きし、お話を伺いました。
Q 佐藤先生の普段のお仕事について、簡単にご説明をお願いします。
佐藤先生:私はにじいろ保育園南雪谷の保育士で、現在10名いる5歳児の担任をしています。保育園では年間計画に沿って保育をしています。その中で、今は新型コロナウィルスの関係で中止していますが、10月からはまた食育活動が始動します。園の中には食物アレルギーを持っている子どももおり、様々な制限がある中で、子どもたちが楽しめる食育やクッキングのやり方を、栄養士や調理師と一緒に考えて、進めていくのも仕事の一つです。
Q あまり知られていない業務もたくさんあるのですね。例えば、最近はどんなことをしましたか?
佐藤先生:今年の5月頃から、子どもたちが廃材遊びというゲームにはまっています。ビスケットの箱やロボットなど、身の回りの廃材を用意し、子どもたちで何かを作って遊びます。園には廃材遊びの本もあり、子どもたちに見せたところ、大きな焼き菓子の箱で絵本屋さんを作っていました。小さく切った紙に、自分たちの想像力を働かせて文章や絵を描き、絵本を作ってその絵本屋さんに並べました。子どもたちの考える物語がとても面白い内容だったので、それを年末にあるお遊戯会の題材として検討しています。ただ、物語の登場人物が、子どもの数と必ず合うわけではないので、演技の配役や脚本については、子どもたちの個性を発揮できるように、担任たちで工夫していこうと思います。
Q 幅広いお仕事をされていますね。にじいろ保育園は、活動の中でも特に食育活動に力を入れているというイメージがあります。食育活動を通して、どのような効果がありましたか?
佐藤先生:まず、5歳児が一番の年長児ということもあり、今は三色食品群について教えています。三色食品群とは、食品を特徴や体内での働きによって「赤」「黄」「緑」の三色に分けて、円グラフ化した図表です。それとは別に、グラフに入る食品シールをそれぞれラミネートで作り、給食の時間の後に、子どもたちにその日の給食に使われたものを思い出してもらい、そのラミネートシールを「赤」「黄」「緑」の属する場所に貼ってもらっています。そして、この内容に伴い、「栄養のうた*」という歌も積極的に歌っています。これは、「ごんべさんの赤ちゃん」という童謡の歌詞を、食品と栄養についての知識に書き換えた替え歌ですが、歌っているうちに、子どもたちも歌詞を覚えてきています。このようなこと以外にも、4月下旬からは茄子、枝豆やサツマイモ、ピーマン、トマトの栽培を始めたところ、子どもたちが食に興味を持ってくれていると実感しています。この一連の流れから、最近では枝豆を収穫し、枝豆の炊き込みご飯を作ってもらいました。このように、まず子どもたち自身が学び、食材を育てることで、給食を食べた時に、ありがたさを感じるようになりました。
Q 五歳児には、すでにこのような食育を経験させているのですね。このような活動内容は、先生方が考えられているのでしょうか。
佐藤先生:食育年間計画を、栄養士・調理師・園長を含め考え、それらを活動におろしています。食材などは自分たちで検討して選んでいます。例えば、サツマイモは12月のクリスマスのリースを作るために、そのつるを伸ばしており、4月から先を見据えた活動をしています。また、 保育園の給食では普段から豆乳を使用した献立があるため、クッキングでミルクもちを作るとき、牛乳を豆乳に置き換えてみました。それが好評となり、保護者の方たちからもレシピを教えてほしいとの声をいただきましたので、とても嬉しく思います。
Q このクッキングに無調整豆乳を使用していたと思いますが、子どもたちは無調整豆乳の味が苦手ではなかったのですか?
佐藤先生:そうですね、みんな抵抗なく食べていました。豆乳と言えば、今はチョコ味などの豆乳飲料も普通にスーパーで売られており、子どもたちも良く飲んでいますが、調製豆乳についてはやはり大豆の風味が強く、苦手な子どももいます。ただ、今回の豆乳もちはぷるぷるとした子どもたち好みの食感であり、そしてきな粉もまぶしてあったので、食べやすかったと思います。むしろ、おかわりを希望する子どもは多くいました。
Q こういうクッキング以外にも、園児たちが豆乳を摂取する機会はありますか?
佐藤先生:家庭内で飲んでいるという子どもたちが多くいると感じています。また、保育園の給食では、乳アレルギーの有無にかかわらず、みんなが同じメニューを食べられるよう豆乳を使用した献立があるため、味には 慣れているのかもしれません。
Q では、今後は豆乳を使用した他の食育計画などがあれば、教えてください。
佐藤先生:今回の豆乳もちのクッキングがとても好評で、子どもたちもまた食べたいと思っているので、別の方向で何か作ってあげられないかという思いはあります。今後、10月にクッキングも再開しますので、ハロウィンに向けて、豆乳を入れたホットケーキを作るという企画も考えています。
Q このように食育活動を続けている中で、園児たちにとって、なにか新しい気付きはありましたか?
佐藤先生:子どもたちにとってクッキングは、楽しみながら新しいことを発見する機会になっています。 豆乳もちは、最初のドロドロの状態から固まり、ぷるぷるになるまで混ぜる過程がありますが、それにみんなが「そうなるんだ」と驚いたのも、子どもならではの発見です。このような純粋な感動体験を家にも持ち帰って、家族と共有することで、保護者の方も自宅で作りたいと考えるようになったのではないかと思います。
Q 保護者の方たちにも、食育活動は好評ということでしょうか。
佐藤先生:保育園での食育の味付けはどんな感じなのか、興味を抱いてくださっています。保育園の玄関に、その日の給食メニューを全て展示食として飾っていますが、 保護者の方たちも必ずそれを見てくださり、おいしそうと思ってくださっています。また、隣にはそのレシピも置いてあるので、すぐに手に取って持ち帰っていただけるようにしています。保護者の方たちが迎えに来た時に、子どもたちに「今日何食べた?」と聞けるので、そこから親子のコミュニケーションに発展する環境を作るよう、心がけています。
佐藤先生、今回はご紹介いただき、ありがとうございました。
今後も、子どもたちに楽しいと思ってもらえる食育活動ができるよう、応援しています。
*栄養のうた
からだをつくるの 何でしょう
それは赤の食べものよ
お肉に 魚に 豆 たまご
牛乳 小魚 のり わかめ
ねつや力になるものは
それは黄色の食べものよ
ごはんに うどんに 芋 さとう
油や バターが エネルギー
調子を出すもの 何でしょう
それは緑の食べものよ
キャベツにキュウリに ねぎ だいこん
にんじん かぼちゃに ほうれん草
赤 黄 緑をとりそろえ
きちんと食べれば じょうぶな子
運動 あそびにお手伝い
もりもり かつやく 元気な子