ベトナムの豆乳事情

朝の屋台や、時には水上マーケットの船の上で売られている、温かい豆乳を飲むひと時は、長い間、ベトナム人の日常生活の一部でした。今でも、屋台の豆乳は人気ですが、ベトナムの経済成長と共にパックに入った豆乳の生産量も増え、海外へ輸出するほどに成長しています。 

海外にも進出するベトナム豆乳

ベトナムの食品大手NutiFood社が生産する豆乳、「Nuti」は、2018年には米国のスーパーの棚に並ぶようになりました。2020年10月からは、中国のウォルマート・チャイナにも進出しています。アジア料理が好きな読者の中には、今年からベトナム産の豆乳、「Fami(ファミ)」が日本でも売られていることに気が付いている人がいるかもしれません。ファミは、クアンガイ製糖傘下のビナソイ社の製品で、2021年6月から、日本のアジア食材店、約1000店舗で販売されるようになりました。中国では、ECサイトのほか、スーパーやコンビニでファミが販売されています。

ベトナム国内では、「おしゃれ」な豆乳カフェが話題に

ビニール袋に入った屋台の豆乳ではなく、冷房の効いたおしゃれなカフェで豆乳を楽しむスタイルも定着してきました。もともと、ベトナムではカフェが大人気で、街中のいたるところにカフェがあります。そんな中、2015年に創業したSoya Gardenは、有機大豆を使用した豆乳ドリンクなどを提供するヘルシー志向のカフェです。お店のロゴに「大豆の庭」と日本語が入っているため、現地でも日本のチェーン店と勘違いする人がいるようですが、日本には出店していません。

メニューを見ると、謎の日本語に驚かされます。「東京太郎」は、豆乳とタロイモを混ぜた飲み物なので、太郎とタロイモをかけているのかもしれません。さらに不思議なのは「Yin Yan (陰陽)信長」なるオーガニック豆乳飲料です。こちらは、豆乳にコーヒーと紅茶を混ぜた飲み物ですが、豆乳の白とコーヒー、紅茶の暗色から「陰陽」の着想を得たのかもしれません。しかし、「東京」と「信長」がどこから来たのかは謎のままです。

信長豆乳は苦戦するも、ベトナムの豆乳消費は順調に成長

しかし、信長という名前が影響したのか、Soya Gardenの経営は波乱万丈でした。一時は全国で50店舗を展開するまでに成長したものの、2021年5月には、国内最大都市ホーチミンから撤退し、首都ハノイにわずか8店舗を残すのみとなっています。そして、Soya Bistroとして、カフェからレストランへの転換を図るとともに、デリバリーにも注力してコロナ禍を乗り切ろうとしています。

カフェ戦国時代のベトナムで、信長は天下統一を果たせずに終わりましたが、ベトナムでの豆乳人気は順調に伸びています。一人当たりの年間消費量は、2013年から2019年の間に1.7倍に成長しました。昔ながらの屋台で、スーパーで、そしてカフェで。豆乳を楽しむ場がますます増えていくベトナムでは、今後も豆乳消費が成長していくことでしょう。

…ということで、今回はベトナムの豆乳事情についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。次回は、世界の豆乳市場について紹介する予定です。是非お楽しみに。

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