カナダの豆乳事情

カナダは、ロシアに次いで世界で二番目に面積が大きい大国です。豊かな大地を有するカナダでは農業が主要な産業のひとつになっており、その中でも酪農は重要な一角を占めています。しかし、豆乳などの普及もあり、カナダでの一人あたりの牛乳消費量は、ここ30年ほど減少傾向にあります。カナダならではの豆乳事情を探ってみましょう。

カナダに限らず、牛乳の消費量は多くの先進国で減少傾向にあります。これは、若者に比べて牛乳を飲む量が少ない高齢者の割合が増えているためですが、加えて、カナダならではの事情が二つあるといいます。一つは、移民です。カナダには、アジアを始め世界からの移民が多く集まっており、彼らがカナダに移住する前の食生活に牛乳を飲む習慣がないため、移住者が増えても牛乳の消費量が増えないのです。これまでの記事で紹介したように、中国やベトナムからの移民であれば、牛乳よりは豆乳に親しんでいるといえそうです。

そして、近年の大きな変化として、一切の動物性食品を拒否する厳密な菜食主義(ヴィーガン)の広がりがあります。従来のベジタリアンは、卵や牛乳、チーズなどの乳製品は食べますが、ヴィーガンでは、このような乳製品を一切とりません。健康に配慮して、という考え方のみならず、動物を虐待するような残酷なやり方の酪農産業を支援したくないという倫理的な理由からヴィーガンを選択する人も増えているのです。

今では、豆乳を始め、アーモンドミルクやライスミルクなどの代替品が、スーパーで身近に手に入ります。日本でも様々なフレーバーの豆乳飲料が季節ごとに楽しめますが、カナダでも、イチゴやチョコレート味の豆乳が売られています。日本のシンプルな無調整豆乳が好きな人は、加糖されていない、“unsweetened“の豆乳を選ぶのが良いでしょう。

このコラムを読んでいる皆さんは、豆乳が栄養たっぷりで健康に良い飲み物であることを良くご存じだと思います。カナダには、豆乳のそんな魅力に注目して、豆乳を使った人道支援を行っている団体があります。栄養失調の子どもや母親をサポートすることを目的に、2001年に設立されたFirst Stepsです。First Stepsは、栄養失調や飢餓に苦しむ北朝鮮の子どもや母親に、豆乳を寄付する活動を続けています。2001年以来、10万以上の子どもと2万人以上の母親に、豆乳を届けてきました。このような活動が長年にわたり続いているのは、アジアからの移民が多いカナダならではの取り組みかもしれませんね。

動物愛護から人道支援まで、カナダでは様々な理由で豆乳が注目され、愛されています。様々な人に、様々な理由で選ばれる。そんな所も、世界に広がる豆乳の魅力といえます。今回は、カナダの豆乳事情についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。それでは次回もお楽しみに。

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