知っておきたい豆乳に関わる正しいアレルギーの知識

スーパーやコンビニ等で販売されている豆乳製品を見てみると、ほとんどの商品で「原材料でアレルギー物質の表示が義務付け・推奨されているもの」として、大豆が記載され、アレルギーに関する注意事項も記載されています。

近年、食物アレルギーの患者数は増加傾向にあると言われていますが、豆乳を飲む際に食物アレルギーの観点で気をつけることはあるのでしょうか?今回は、豆乳と関係のある食物アレルギーに関して知っておきたい知識をまとめてお伝えします。

豆乳に関わる食物アレルギーにはどんなものがある?

豆乳を飲む際に気をつける必要があるのは、もともと大豆アレルギーがある人だけだと思っていらっしゃる方も多いと思いますが、実はそうではありません。

独立行政法人国民生活センターには、これまで豆乳を飲んでいた人が突然、重度のアレルギー症状を起こした事例や、豆腐など他の大豆製品ではアレルギー症状が出ないにも関わらず、豆乳を飲んだ時にごくまれにアレルギーが発症したという事例が報告されています。これは、主にカバノキ科花粉症の患者にみられる “花粉―食物アレルギー症候群”と呼ばれるもので、近年の花粉症患者数の増加に伴い、増加傾向にあります。

意外と知られていませんが、大豆アレルギーは乳幼児期に発症する即時型症状だけでなく、この事例のように学童期以降に発症するカバノキ科花粉症に伴う“花粉―食物アレルギー症候群”も多い特徴があるのです。さらに、リンゴやモモを食べて喉がかゆくなる人も、豆乳でアレルギーを起こす可能性があるので注意が必要です。

大豆アレルギーの症状には個人差がありますが、蕁麻疹(じんましん)やかゆみ、咳などが引き起こされ、時にアナフィラキシーショックを起こし、急激な血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては生命を脅かす危険な状態になることもあるため、甘くみてはいけません。

日本にはどのくらい大豆アレルギーの人がいるの?

日本における正確な患者数は不明ですが、報告されている即時型食物アレルギーの原因のうち大豆は1.6%を占めており、10番目に発症数が多いことがわかっています。ゆえに食品表示法で、大豆も食品のパッケージに可能な限り表示するよう推奨されているのです。

乳児期に発症する即時型大豆アレルギーは年齢を経るにつれ改善し、多くは幼児期までに自然に治癒していく可能性が高く、日本人の大豆アレルギー児の検討では3歳までに78%が治癒することが報告されています。

大豆アレルギーがあると、豆乳は飲めないの?

現在のところ、食物アレルギーと診断された場合は、原因となるアレルゲンを摂取しないこと(正しい診断に基づいた必要最低限の原因食物の除去)で、発症を防ぐことが一般的です。よって、大豆アレルギーがある場合は、豆乳の摂取を避けることが多いようですが、完全に除く必要があるかは重症度等によって異なるため、かかりつけの医師に相談の上判断するようにしてください。

また、同じ大豆製品であっても、大豆油(ソイオイル)や醤油、味噌は症状が出ることなく摂取できるケースもあるようです。納豆は発酵により低アレルゲン化が期待されています。しかしながら、大豆アレルギーがあるにも関わらず自己判断で安易にこれらの食品を口にしてしまうのは危険を伴いますので、気をつけた方が良いしょう。

まとめ:食物アレルギーの観点で豆乳を飲む際に気をつけること

豆乳をたくさん摂取するとアレルギーになりやすくなるわけではありません。現在、豆乳等の大豆製品を問題なく摂取できている人が、今後も摂取し続けることは通常問題ないため、過剰に心配する必要はないでしょう。

ただし、アレルギー体質の人は、大豆に限らず何にでも過敏な人が多いので、カバノキ科花粉症や、果物のアレルギーのある人は、現在豆乳等によるアレルギーがなくても、今後豆乳等によるアレルギーを新しく発症する可能性は他の人よりも高いと考えられているため、注意をした方が良いと言えます。


【参考文献】
[1] 独立行政法人国民生活センター, 豆乳等によるアレルギーについて-花粉症(カバノキ科花粉症)の方はご注意を-
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20131205_1.pdf
[2] 消費者庁, 加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210514_01.pdf
[3] 一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会, 食物アレルギー診療ガイドライン2021


なお、豆乳マイスター通信は、管理栄養士の藤橋ひとみさんにご担当いただいています。

プロフィール
株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。
大手食品メーカー開発職、ベンチャー企業での勤務を経て、フリーランスの管理栄養士として独立。商品開発コンサルティング、レシピ開発、コラム執筆、メディア出演など幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得に向けて栄養疫学研究を行っている。豆腐好きが高じて、さらに知識を極めるべく、大豆関連資格の制覇に挑戦中。管理栄養士の知識を活かしながら、大豆製品の魅力を発信している。

【所有資格】
管理栄養士、栄養士、調理師、製菓衛生師、
豆乳マイスター”プロ”、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、
いなり寿司マイスター、おから再活プロデューサー、
ソイオイルマイスタープロ、納豆真打、みそまるマスター、
インナービューティープランナー、ほか

【ホームページ】
https://is-food-health-labo.com/

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