“春バテ”と豆乳の注目栄養素“トリプトファン”の意外な関係とは
季節の変わり目、気温が上がり過ごしやすい日が増えてきましたね。新年度も始まりしばらく経つ頃ですが、心身に不調を感じていませんか?
もし不調を感じていたら、それは“夏バテ”ならぬ“春バテ”かもしれません。
この時期特有の不調“春バテ”って、知ってます?
就職や転勤・部署異動、進学、進級といった春特有の生活環境の変化や、激しい寒暖差などがストレスの原因となり、この時期に心身にさまざまな不調を引き起こすことを巷では“春バテ”というようになりました。医学的な視点でみると、自律神経失調症の1つと捉えられることが多いようです。自律神経失調症とは、明らかな疾病がないにも関わらず、自律神経のバランスの崩れから生じる不調を指します。その症状には、全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸等があります[1]。
少しでも“春バテ”を感じたら?
放っておかずに、早めの対策が大切です。春バテ対策の鍵を握るのは、自律神経のバランスを整えること。そのために、まずはストレスケアに意識を向けてみましょう。リラックスできて楽しいと思える時間、心の充実感を得られる瞬間を大切に、気軽にできるストレス解消法を見つけるのが効果的です[2]。
また、自律神経のバランスを整えるために、トリプトファンを積極的に摂るとよいという話をネット上などで目にしたことはありますか?
“トリプトファン”って何者?
トリプトファンは近年認知度が高まりつつある、通称“幸せホルモン”のセロトニンの材料として知られています。セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、他の神経伝達物質であるドーパミン(喜び、快楽など)やノルアドレナリン(恐怖、驚きなど)等の情報をコントロールし、精神を安定させる働きがあります。加えて、自律神経のバランスを調節する作用があることから、不足すると自律神経のバランスが崩れやすくなってしまいます [3]。よって、セロトニンのもととなるトリプトファンの摂取不足は避けたいところです。
豆乳にも含まれる“トリプトファン”、どのくらい摂ればよいのでしょう?
実はこのトリプトファン、食事から必ずとる必要がある必須アミノ酸の一種であることはご存知でしょうか。乳製品やナッツ類のほか、大豆製品に多く、豆乳にも含まれている、最近注目されている栄養素です。1日のトリプトファンの必要量は、18歳以上の場合4.0mg/kg体重。たとえば、体重50kgの人の場合は、200mgになります[5]。豆乳には小1パック(200g)に約100mgのトリプトファンが含まれていますので、豆乳を飲むだけで効率的に補えるのは嬉しいですね[4]。
季節の移り変わりを、豆乳と共に味わって豊かな毎日を
春は新たなはじまりの季節。心躍る時期でもありますが、同時にストレスも知らず知らずのうちに感じていることも忘れずに。“春バテ”してパフォーマンスを下げないよう、自分を労る時間をしっかりと取るようにしましょう。
そして、ひと休みのお供に豆乳を味わってみてはいかがでしょうか。
【参考文献】(全て2024年4月18日参照)
[1] 厚生労働省, こころの耳, 自律神経失調症
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1591/
[2] 日本臨床内科医会, 自律神経失調症
https://www.japha.jp/doc/byoki/019.pdf
[3] 厚生労働省, e-ヘルスネット, セロトニン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
[4] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年, 豆類/だいず/[その他]/豆乳/豆乳, 02.アミノ酸-可食部100g
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04052_7&MODE=1
[5] 厚生労働省, 日本人の食事摂取基準 (2020年版), たんぱく質https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf
【プロフィール】藤橋ひとみ
株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士
東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。すべての人が毎日の食事で 心と体のトラブルを予防・改善できる社会づくりに貢献すべく、レシピ開発、コラム執筆、メディア出演など幅広く活動中。豆乳マイスター“プロ”のほか大豆製品に関する資格を多数取得し、管理栄養士の知識を活かしながら、その魅力を発信している。
【ホームページ】https://is-food-health-labo.com/