豆乳を飲むと認知症リスクが軽減される?!
高齢化社会と認知症患者の増加
高齢化に伴い、認知症患者の数は年々急増しています。2024年5月の日経新聞の記事によると、厚生労働省研究班が8日に示した調査で、認知症の患者数が2030年に推計523万人にのぼるとされています。2022年時点の443万人から8年間で約80万人増える推計で、高齢化の進展に伴い、50年には587万人、60年には645万人と増加傾向が続いています。65歳以上の高齢者の3人に1人が認知症かその予備群というデータもあります。
大切な記憶が少しずつ失われ、人格が変わってしまったり、単純な計算や日常動作ができなくなったり、やがては家族の顔も、自分が誰なのかも分からなくなる、こんな暗いイメージのある認知症。できれば生涯認知症とは無縁のまま、人生の最後までハッキリと自分らしく過ごしたいというのは、誰もが思うことでしょう。どうしたら認知症を予防できるのか気になっている人も多いはずです。実は、豆乳が認知症のリスクを軽減させるという研究結果があることをご存知でしょうか。今回は、豆乳と認知症予防についてご紹介します。
豆乳で認知症リスクが軽減?!英国の研究結果とは
2023年10月、イギリスの研究機関が、豆乳を飲む人は豆乳を飲まない人に比べて認知症のリスクが3割軽減されるという研究結果を発表しました。
中国中山大学のZhenhong Deng氏らは、英国において、植物性の豆乳を含む種類別のミルク摂取量と認知症発症リスクとの関係を調査しました。調査対象は、英国の大規模観察研究「UK Biobank」の参加者のうち、ベースラインで認知症ではなく、ミルクの摂取に関する情報が記録されていた30万7271人(平均年齢56.3歳、52.0%が女性)です。
これまで行われてきた中高年者のミルク摂取と認知症発症リスクの関係を調べた研究では、一貫した結果は得られていませんでしたが、今回の研究では、豆乳を飲む人は、ミルクを飲まない人に比べ認知症の発症リスクが低いことが明らかになりました。分析に影響を及ぼす可能性のある要因と遺伝的な認知症リスクを考慮して分析したところ、ミルクを飲まない人たちに比べて認知症のリスクが有意に低かったのは、豆乳摂取者のみで、リスクは31%低くなっていました。
また、豆乳を飲む人の認知症発症リスクは、牛乳、脱脂乳など他のミルクを飲む人と比べても統計学的に有意に低下していました。
豆乳が認知症リスクの低下と関係する理由について、Zhenhong Deng氏らは「含有されているイソフラボンの作用や、牛乳に比べて飽和脂肪酸が少なく不飽和脂肪酸が多いことなどが影響しているのではないか」との考えを示しています。また、「認知機能を保護する効果が豆乳の摂取量や摂取頻度と関係するかどうかや、英国以外の集団にも今回の結果が当てはまるかどうかを、さらなる研究で明らかにする必要がある」としており、今後の調査継続が望まれます。
認知症予防に大豆レシチンが効果を発揮
豆乳などの大豆製品は「大豆レシチン」という栄養素が豊富です。レシチンはフォスファチジルコリンとも呼ばれ、約13%のコリンを含むリン脂質(リンを含む脂質)の一種で、細胞膜の主成分です。脳神経や神経組織を構成しており、レシチンなどのリン脂質が不足すると、細胞膜が正常に働かなくなったり、コレステロールが蓄積したりすることもあります。レシチンは、神経伝達物質を生成することで記憶力の低下や認知症の予防に効果があるとされ、動脈硬化の予防や脂質代謝の活性化効果も期待できるといわれています。
アルツハイマー型認知症の原因の1つは、脳内神経伝達物質であるアセチルコリンの量が減少することです。アセチルコリンはコリントアセチルCoAからできていますが、コリンはレシチンからできています。材料であるレシチンやコリンが不足すると、神経伝達物質が生成されなくなってしまうため、徐々に記憶力の低下や認知症などを引き起こします。つまり、豆乳を飲んでレシチンを摂取すれば、アルツハイマー型認知症の予防につながる可能性があるのです。
まとめ
食生活を見直すことで、認知症の予防効果が期待できます。
豆乳は飲み続けることが大切です。無理なく継続できるように、毎日少しずつ料理に取り入れたり、お気に入りのアレンジを見つけたりして豆乳生活を続けていきましょう。