豆乳で、免疫の「材料」と「現場」を整える

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野 分野長 増富 健吉先生に聞く
大豆たんぱく・大豆オリゴ糖・食物繊維の話
「免疫力を高める」とよく言われますが、そもそも医学的に“免疫”とは何なのでしょうか。国立がん研究センター研究所で研究に携わる増富先生は、免疫を「外来の敵と闘う生体機能」であるとシンプルに整理します。そして、その免疫を担う“抗体”はたんぱく質です。つまり免疫は、気合いだけで上がるものではなく、体をつくる材料(たんぱく質)があってこそ働く仕組みでもあります。一方で、免疫の“現場”として注目されるのが腸です。腸には免疫担当細胞や分泌抗体が多く存在しながら、腸内細菌と共存できるよう免疫反応が制御されています。
今回のインタビューでは、大豆たんぱく(材料)、そして腸内環境に関わる大豆オリゴ糖・食物繊維(現場)について、増富先生にお話をお聞きしました。
Q :まず、最初に「免疫」とはどういうことなのかを教えてください。
増富先生:免疫を解りやすく分類する方法はいくつかありますが、その一例として、免疫は大きく分けると、自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は生まれながらに持っている免疫機能で、細菌が体に入ってきたら免疫細胞が集まって対処します。獲得免疫は、予防接種による免疫で代表されるように、生後獲得する免疫のことです。一度、ウイルスなどに感染するあるいは予防接種により免疫を獲得すると、次に同じ敵が入ってきたときに効率的に外敵(一例がウイルス)を攻撃することができます。もっと簡単に言えば、免疫は外来の敵、つまりウイルスや細菌と闘う機能です。代表的な免疫担当細胞としては、B細胞が分泌する抗体、T細胞、マクロファージ、樹状細胞などがよく知られています。
Q: 免疫を担う抗体や免疫細胞は、何からできているのでしょう?
増富先生:基本的には全ての細胞はたんぱく質でできています。抗体は“免疫グロブリン”とも言いますが、生体内に存在する代表的なたんぱく質の一つです。健康診断でも総たんぱく(TP)を測るでしょう。血液中のたんぱくのうち約半分がアルブミン4分の一から5分の一がガンマグロブリンといっていわゆる抗体と呼ばれるものです。つまり健診などの採血で測定する総タンパク質のうちの4分の1程度が免疫を担う中心的存在ともいえる抗体なんです。免疫は「外敵と闘う仕組み」であり、その中核に“たんぱく質(抗体など)”があります。
豆乳の強みのひとつは、大豆たんぱくを日常生活における導線に乗せやすい点です。朝の一杯、仕事中のソイラテ、運動後の補給など、「続けられる形」で取り入れやすいのが特徴です。
Q: たんぱく質が不足すると、免疫にはどんな影響が出ますか?
増富先生:たんぱく質が減った状態、つまり低栄養状態になると、血中のたんぱく濃度も下がってきます。たとえば肝硬変の人は血中のたんぱくがすごく低い。そうすると、もちろん免疫機能も低下します。免疫は闘う機能ですので、材料が不足して弱れば、体調を崩しやすくなる方向には働きます。

Q: 日本人の食生活は、たんぱく質が不足しがちなのでしょうか?
増富先生:意識しなかったら、どちらかというと糖質のほうに傾いているのではないですか。だから、たんぱく質は“意識して”摂る必要があると思います。植物性が良いか動物性が良いかは一概には言いにくいですが、私はバランスよく摂るのが大事だと思っています。
たんぱく質は“摂っているつもり”でも、忙しい日常では主食中心になりがちです。豆乳は、食事全体を大きく変えずに「たんぱく質を足せる」現実的な選択肢になります。
Q: 「免疫の7割は腸にある」と言われます。これはどのような意味ですか?
増富先生:腸管内には免疫担当細胞がたくさんいます。さらに腸の中にはIgAという分泌抗体がたくさんいるのです。血中にもいますが、腸管内にも多い。面白いのは、抗体は本来、細菌にくっついて排除するのが仕事ですが、腸の中では腸内細菌と共存しています。免疫反応がむやみに起きないよう、善玉細菌を攻撃せず悪玉細菌は攻撃するという都合の良いバランスが取られているのです。腸は“免疫が集まる場所”でありつつ、反応が暴走しないよう制御されている場所でもある、ということです。
Q:腸内環境を整える、というのは結局どういうことですか?
増富先生:腸内細菌叢(そう)という言葉がありますよね。腸の中にいるいろんな細菌の集まり全体をそう呼びます。腸内環境を整えるというのは、その腸内細菌叢を整えることでもあります。最近は臓器連関という考え方が出てきて、腸と脳、腸と肝臓など、離れた臓器同士が影響し合っていると言われます。昔からストレスが強いと胃が痛む、下痢するという話はありましたが、最近は腸内細菌叢のバランスを免疫により整えるという「免疫と腸管の臓器連関」の概念により説明されるようになってきました。さらに腸内細菌叢が脳や肝臓に及ぼす影響が強い、という考え方も“最近のトレンド”として出てきています。

腸内環境に関わる成分として注目されているのが、大豆オリゴ糖や食物繊維です。一般にオリゴ糖は“善玉菌の栄養源”として語られることが多く、食物繊維は腸内細菌により分解・発酵され、腸内環境に関わる物質(短鎖脂肪酸など)が生まれる、という研究の流れもあります。
Q: 大豆オリゴ糖や食物繊維について、教えてください。
増富先生:正直、オリゴ糖の細かい作用を私が専門的に断言するのは難しいです。プレバイオティクスという説明があります。ただ、どこまでをどう言い切るかは慎重に考えたほうがよいと思います。一方で、腸内細菌叢を整える、腸内環境を整えるという方向性自体は、いま注目されています。食物繊維の話も含めて、その分野の専門家はいますから、そこは栄養の専門家と一緒に丁寧に整理していくのが良いと思います。
Q: 最後に、成分を意識しながら「続けられる」体調管理のコツは?
増富先生:結局、適度な運動と栄養だと思います。運動はよいと思いますよ。筋肉はメンタルも含めて、いろいろなところに良い方向に影響します。また適切な栄養管理は免疫機能を司る細胞の材料供給源としてのたんぱく質も当然大切でしよう。腸内環境を整えることは、最近の最新研究の成果からすればこれまでは思いもよらなかった遠隔臓器間の臓器連関の観点からも重要でしょうし、今後も意外な関係が見つかる可能性も十分にあります。無理のない範囲で運動と栄養、睡眠で日々の生活を整えていくことではないですしょうか。
結び
増富先生のお話から見えてきたのは、免疫を「闘う仕組み」として捉え、まず材料(たんぱく質)を整えること、そして免疫が集まる“現場”でもある腸の視点から、腸内環境に関わる成分(大豆オリゴ糖・食物繊維)を日常の中で無理なく取り入れる、という考え方です。豆乳は製造過程で大部分の食物繊維が取り除かれ少なくなりますが、食物繊維を強化した豆乳製品を選択することで効率的に補うことができますので、このような成分を「続けやすい形」で生活に取り入れられる食品のひとつです。できることから、日々のコンディションづくりに活かしていきたいものです。
